薬剤師の皆さん、もしもスポーツ選手からドーピングの問い合わせがきたらどうしますか!?
今回は、東京オリンピックイヤーの今年、備えあれば憂いなしということで薬剤師向けの「現役スポーツファーマシストが教えるドーピングに関する問い合わせ対応法」をアンチドーピング活動に携わっている現役薬剤師が解説します。
- ◆禁止表国際基準の更新頻度
- ◆ドーピングを調べる(検索できる)三種の神器
- ◆市販薬を調べる方法
- ◆国内産のサプリメントを調べる方法
- ◆漢方薬は服用しちゃダメ!!
- ◆海外製のサプリメントは飲んじゃダメ!!
- ◆(海外製)サプリメントの問い合わせへの対応
- ◆点滴(鉄剤を含む)は注意!!
- ◆治療上どうしても必要な医薬品を使用しなければならない場合
- ◆TUE(治療使用特例)とは!?
- ◎まとめ
◆禁止表国際基準の更新頻度
1年毎に改訂。10月1日公示→翌年1月1日発行
◆ドーピングを調べる(検索できる)三種の神器
・薬剤師のためのアンチドーピングガイドブック(最新版)
・ドーピング検索サイト「Global DRO」
・ドーピング検索スマホアプリ「DINX」
◆医療用医薬品を調べる方法
上記のいずれかで検索すること。
◆市販薬を調べる方法
ガイドブックの「使用可能リスト」や「DINX」にあるもので、名称すべて合致する医薬品のみ使用する!!
◆国内産のサプリメントを調べる方法
①まずはパッケージに書いてある成分表を確認。
②禁止物質を含まない場合、製造元に確認。
※サプリメントの場合、成分表に載っていない成分を含む可能性があるため製造元にも確認する必要があります。
◆漢方薬は服用しちゃダメ!!
マオウ、ホミカ、カイクジン、ジャコウを含む漢方薬はドーピングにおいて禁止物質となるため、使用してはいけないことは調べればすぐわかりますが、これらを含まない漢方薬はドーピングには引っ掛からないのか。
答えは「△」です。
そもそも漢方薬の元となる生薬は天然由来ですが、天然=不純物を含むことを意味します。また、漢方薬を取り扱う製薬会社は「ツムラ」や「コタロー」等で一括して製造しているため、微量の禁止物質が混入している可能性は極めて高いです。
そのため、アンチドーピングの面では「漢方薬は服用しないこと」となっています。
◆海外製のサプリメントは飲んじゃダメ!!
国内製であれば、直接製造元に確認すればある程度はわかりますが、海外製は果たしてどうなのか。
答えは「△」です。
まず、パッケージに書いている成分だけで判断してはいけません。なぜなら、海外製のサプリメントは不純物(成分表に載っていない成分、特にステロイド)が含まれる可能性があるからです。ある統計によると、海外で流通するサプリメントの約2割が成分表に載っていない成分(ステロイド)が含まれているといわれています。
よって、飲んで大丈夫なのかの判断が難しく、ドーピングに引っ掛かる可能性もあるため、「海外のサプリは服用しない方がよい」とされています。
◆(海外製)サプリメントの問い合わせへの対応
・禁止物質の表示がある場合
「このサプリメントには禁止物質が含まれています。」
・禁止物質の表示がない場合
「製品に禁止物質を含まないという確認はできません。」
◆点滴(鉄剤を含む)は注意!!
点滴(鉄剤を含む)は、基本的にはドーピングに当たるため、やむを得ない場合以外は行うべきではない。
◆治療上どうしても必要な医薬品を使用しなければならない場合
TUE申請を提案する。
◆TUE(治療使用特例)とは!?
・禁止物質や禁止方法であっても、事前に所定の手続きによってTUEが認められれば、例外的に使用することができる。ただ、TUEが承認されていなければ、医療上の理由でも禁止物質・禁止方法を使用できない。
・原則としてTUEが必要な大会の30日前までに申請する必要がある。
◎まとめ
・三種の神器を使って検索すること。
・市販薬は検索にて「名称すべて合致する医薬品のみ」使用すること。
これらの問い合わせがきたら「不明」や「わからない」と伝えてもいい。
・点滴は注意。
・どうしてもの場合は「TUE申請」を提案する。
最終決定をするのは薬剤師ではなく、選手本人(監督・コーチ)です。我々薬剤師は今持てる能力を発揮し、選手たちをドーピングから守ってあげましょう。以上、薬剤師向けのドーピング対応法でした。
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